祖母の話

 以前、父方の祖母の家を訪ねた時、何がきっかけか忘れてしまったけれど、ああ、そうだ、愛犬さんびといっしょに遊びに行ったのでした。

そこで、まだ祖母が幼かった頃の話をしてくれました。
いまから80年ほど前、祖母が近所の友達と家の近くで遊んでいた時のこと。当時の東京は保健所のおじさんが野良犬を町から排除するために定期的に町を歩いていたそうです。
いつものように、保健所のおじさんが綱のようなもので野良犬たちをひきづる様子を近所の皆で眺めていると、その中に一匹祖母の家で飼われていた犬が紛れ込んでいたのだそうです。
庭で放し飼いにされていたその飼い犬は何かの拍子で庭をでてしまったのでしょう。野良犬と間違われ、保健所のおじさんに捕獲されてしまったのです。
その犬は祖母を見物客の中に見つけ、鳴いたそうです。
それでも祖母は何もできなかった、怖くて、恥ずかしさもあって、恐怖で何もできなかった。
そう言って、泣き出してしまいました。
本当にかわいそうなことをした、誰にも言えなかった、あの犬の目を忘れられない、と言いながらしくしく泣いていました。
わたしは、動物好きの祖母が泣いているのがいたたまれなくて、その場で何かを言って、励ましました。
でも、あれから私はずっと心に何かが引っかかっていて、それがなんなのか、わからないまま放っていて、いつの間にか忘れていました。
そして、先日のサイン会当日の朝、激しく緊張していたので、近所のスタバでクリーニングをしていると、ああ、今日は祖母も来てくれるんだったなぁと思い出しました。
そこで突然、祖母が涙ながらに話してくれた保健所に連れて行かれた犬の話を思い出したのです。
こころにひっかかっていたそれが怒りのようなものに変わっていくのに気づきました。

いくら幼くても、自分の恐れや恥のせいで、犬を見殺しにした祖母への怒りなのか、なんなのかはっきりしないけれど、次から次と溢れてくるやりきれない思いをクリーニング。
いままで誰にも言えなかったことを私を信頼して話してくれたのに、怒る私はひどい、という思いをクリーニング。
次第に出てくる、わたしの中にある動物への思い、形や言葉にならないイメージのようなもの、犬と自分がこうあるべきと思っている形、世界中で起きている動物虐待のワンシーン、いままで近くに接してきた犬たちがふわふわで柔らかくて、犬臭くて、歳をとると固くなってきたり、カサついたりする感覚、病気になって、命がおわっていくことにわたしの意思や思いがもう追いつかなくなっていく切ない思い出、小さな頃お祭で出会ったミドリガメをわたしの不注意で死なせてしまったこととか、次から次にクリーニング。
わたしがいままで、恐れや羞恥心のせいでそのときすべきことを成し遂げられなかった不完了の体験、後悔、今もまだ自分の一部がそこにとどまって、道を見失っている乾いた寂しさのようなものが、心臓を手で掴めるのではないかと思うほどハッキリと感じている。
感情が渦になっているところに向けてクリーニングし続けていくうちに、祖母を通して見せてくれた、実際はわたしの中にあった記憶の渦があるべき場所に戻っていく、その正しさのようなものに、わたし自身がようやく安心して、自分に戻っていくのを感じることができました。
サイン会で、祖母は中央の席に父と一緒に座っていました。舞台から祖母の姿を確認したとき、わたしの判断から解放された祖母は、うまれたときから、愛の中でいのちを与えられた純粋な存在という象徴そのものでした。
それは同時に、わたしが判断や長い歴史の中で積み重ねてきた重たい不完了の記憶からの解放でもありました。
祖母を通して、わたしが自分に戻っていく、その自由さ明るさに、内側の何かが喜びを受け取っていることを、会場にいらしてくださっているみなさんが生み出したオープンな空気の中でハッキリと感じたのです。
長くなってしまいましたが、読んでくださった方、ありがとうございます。
ここて、でみなさんに素敵な情報をシェアさせてください。
『ホ・オポノポノジャーニー』や『アロハ』のカバーで美しい写真を提供してくださっている、オアフ在住アーティストの潮千穂さんの個展” Mauli Ola”が8月から自由が丘で開催されます。
千穂さんは、写真だけではなく、現在版画でも活躍されています。とにかく透明で美しいんです!
http://www.diginner.com/2015/07/chiho-ushio-%E5%80%8B%E5%B1%95%E3%80%90mauli-ola%E3%80%91/
リンクの中から読んでいただける、ステートメント、ほんとうに素晴らしくて、最近何度も読んでいます。
ぜひみなさん、そのみずみずしさを体験しに行ってみてくださいね!
コメントもゆっくりお返ししていきます。

そして、わたしは今、叔父を訪ねて久々のシアトルに来ています。
光で自分が溶けていきそう!

mt. rainier にて  
ありがとうございます。
POI
アイリーン 

祖母の話」への4件のフィードバック

  1. HM

    アイリーンさん、皆さん、こんにちは。
    アイリーンさんのおばあさまのお話、私にも似た経験があります。おばあさまの時代より数十年後になりますが、私が4-5歳だった頃の東京では、まだ保健所の職員の方が、野良犬退治に回ってきていました。近所の人の通報で、当時、庭で時々放し飼いにして、私たち兄弟と遊んでいた愛犬も、殺されるかもしれない状況になり、母が、「これからは、家の庭でも、決して放し飼いしません。」と申し出て、何とか愛犬は命拾いしました。けれど、隣の建物の大きな駐車場によく遊びに来ていた野良犬3匹は、その保健所の職員によって、隣の駐車場の外階段に吊るされ、次々に絞殺されました。小さかった私は、何も言えず、固まったまま、姉と二人でその光景を見ていました。何も悪いことをしていないのに、野良犬というだけで、殺される犬たち。それを仕事として、何の感情もないように行っている保健所の職員。ただ見ているだけで、何もできない自分。幼い自分の中で、何とも処理できない気持ちが湧き上がりました。今でも、あの時の光景は、鮮明に覚えています。
    そして、おばあさまのことをアイリーンさんが記事にされる一週間前に、私もこの野良犬事件を突然思い出し、クリーニングしていたのです。ですから、この記事を読んで、本当に驚いてしまいました。これは、きっとクリーニングをもっとしなさいということかしらと、今もクリーニングをし続けています。
    アイリーンさんの新刊、私もアマゾンの先行予約をしたのですが、今回は日本の実家に送ってもらい、今月下旬に、主人が日本に仕事で一時帰国する際に、取ってきてもらうことにしました。ですから、まだ読ませていただいておりません。皆さんのコメントを読ませていただき、私も早く読みたい気持ちが高まっています。(クリーニングですね。)サイン会も、参加したかったです。(これもクリーニング。)
    シアトルの山の風景、素敵ですね。私が住んでいる所から、シアトルは比較的行きやすいのですが、今まで一度だけ、日本の家族が遊びに来てくれた時に、旅行しました。シアトルは、アメリカの中でも、ヨーロッパのような風景が楽しめる所だと思います。素晴しい所に叔父様はお住まいなんですね。
    いつも、長々書いてしまってすみません。
    アイリーンさん、皆様、今年の日本は猛暑のようですが、お体に気をつけて、楽しい夏をお過ごし下さい。また、コメントさせて下さい。
    POI

    返信
    1. 平良アイリーン( Irene Taira ) 投稿作成者

      HMさん
      いつも真摯なコメントをありがとうございます。そんなつい最近まであったことなのですね。そして、リンクして、クリーニングされている方がいらっしゃったことに感謝します。
      台湾ではいまでも野良犬というのは、都市の台北にもいて、田舎のほうにいくと、駆除のために一斉に毒を撒くという方法がいまでも行われているそうです。
      そんなことを耳にしたり、感じるのもわたしだし、祖母の悲しみ、あのときの職員さん、犬、そしてHMさんの想いもすべてわたしの中にあります。
      いまクリーニングします。
      シアトルは年々人気になっている様子を感じます。人がその土地を深く愛することから生まれる変化を目の当たりにした旅でした。
      また旅のことも折に触れてシェアさせてください。

      HMさんがお住まいのその土地で、愛がさらに実りますように。

      POI
      アイリーン

      返信
  2. MIX

    アイリーンさん、こんにちは。

    いつもブログ、楽しく拝見しています。
    おばあさまを通してのクリーニングのお話、「祖母を通して、わたしが自分に戻っていく、その自由さ明るさに、内側の何かが喜びを受け取っていること」と表現された言葉に、私もまたクリーニングを追体験させていただいたというか、自らのクリーニングへの流れに乗せていただきました。ありがとうございます。

    そして「ホ・オポノポノ ジャーニー」でも、そんな体験をたくさんさせていただきました!
    ちょうどその前の一週間、私は仕事で深く力不足を感じ、ものすごく落ち込んで自分を責め、罪悪感で息も出来ないような状況で発売日翌日の本を手にしたこともあり・・・
    まずは、クリーニング。
    まずは、自分を取戻すこと。
    一歩進んで、またクリーニング。
    それでいいのだ、という本全体からのメッセージが届き、記憶で目の前が真っ暗だった私には、細い光の糸のようでした。特に、KRさんの牧場での事故のお話・・・。
    アイリーンさんの体験に重ねて、私も何度もクリーニングしながら読ませていただきました。
    あのお話、書いてくださってありがとうございます。

    一ヶ月経ってかなり状況や自分自身のことが違って見えるようになった今、本当によきタイミングで本に出逢えたことを、改めて感謝しています。今も時々ページを開いては、自由を選べる自分を思い出させてもらったりして。ホ・オポノポノ ジャーニー自身が心強い友達のようでもあります。この本との関係もクリーニングしていこう・・・、と今思いました(笑)。
    アイリ—ンさん、ありがとう!

    夏は続きますね。
    シアトル、まだいらっしゃるのでしょうか。
    素敵な時間をお過ごし下さい!

    POI

    返信
    1. 平良アイリーン( Irene Taira ) 投稿作成者

      MIXさん、
      素晴らしいシェアをありがとうございます。文章から伝わるピュアさ、にわたし自身、また自分を取り戻せました。
      この本に出会うべき人というか、もうそこにあったものをたまたまわたしが形にするお手伝いをする役に選ばれたのだなと気づき、自分を小さく扱うことではなく、わたしの中の真の謙虚さが最近のわたしのこころのトゲトゲと優しく落としてくれたような気がします。

      ほんとうにありがとうございます。
      POI
      アイリーン

      返信

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